2018年9月26日水曜日

美しき貴方へ





「あれから一年ですね。」

レッスン後、共にお茶を頂きながら
優しい声でさり気なく向けられた言葉に、この一年間の重みと深みが
私の胸を突いた

一年前とは別人の、美しい横顔をじっと見つめながら
走馬灯のようにこの一年間のことが思い出された

2017年9月23日
初めて我が家へお見えになったTakakoさんを
私はカチコチに緊張しながら、インターフォンの画面越しで確認したのはあの日

そこから月に一度のオートクチュールレッスンが始まった
長崎県という福岡県から遠く離れた土地から
時間も費用もかけて、そしてハイヒールへの情熱を持って、私に挑んでくださった

その責任の重さは今でも変わらずあり、その責任がここまで成長させてくれた

Takakoさんは早朝5時に起床し
Asami先生のエクササイズヴィデオで身体をほぐし鍛え
その後に出勤されていた

そのことが並大抵のことではないことは
ハイヒールの扉を叩いた方なら、きっと伝わると思う

目覚めた時の眠たさとの戦い、継続することの難しさ、一筋縄ではいかないエクササイズ

私も何十回と早朝5時起きのエクササイズに挑戦したが
情けないことに10発2中という酷い有様
エクササイズは早朝より専ら、昼間となった
だからこの方の精神力には敵わない

穏やかな秋から、段々と凍てつく冬へと季節は変わった
それでも彼女は、自宅での研磨を続け
月に一度、休まずレッスンを受け続けた

12月、年末で忙しさも増す中、彼女は変わらず鍛練され続けたことは
サロンで一緒に積み上げるレッスンを通し
彼女の身体を、エクササイズの具合で分かった

そのレッスン直後、忘れられないクリスマスプレゼントが私の元へ届いた
それは彼女から一通のメール

凜先生、レッスン後に帰りのバス停でバスを待っていたら
前から歩いてきたご年配の女性から突然
「貴方をずっと見ていたの。 立ち姿がすごく綺麗。 綺麗よ!」
と言われ、驚きました。 と。

ハイヒールの女神が微笑んだ

読みながらその情景が目に浮かび、うっすら嬉し涙も浮かんだ
まるで我が子が褒められたような、愛が広がった

年が明け、寒さも一層厳しく、背中を丸める人々の光景が多い中
私は負けじと、デコルテを張りながら出勤していた
きっと彼女も同じ思いに違いないと励まされながら

そんな折、彼女は念願のルブタンと運命の出逢いを果たした

自宅サロンでハイヒールレッスンに突入する直前
彼女が箱からそっと取り出したのは、美しいハイヒール 

同時に簡単には寄せ付けない高貴な雰囲気のルブタン
Takakoさんが嬉しそうに大切に扱うその姿に、私の気持ちまでもが高揚した

彼女の身体の軸が強化されたこと
今まで真摯に頑張って続けてきた証となった

吹く風も幾分和らぎ、少しづつ春の訪れを感じる頃
彼女からメールで、ある事情がありレッスンをお休みします、と連絡があった

ここで綴ることは出来ないが、彼女の人生で最も厳しいことが起こり
試練の最中であった

私は祈ること、無事であることを信じるしかなく
せっかく培ってきた彼女の筋肉や軸の状態が気になりつつ
それよりもやっぱり彼女の身の上を、ただ祈るしかなかった

しばらく音沙汰の後の彼女からのメールで
事の事情を知り、ホッと深く胸を撫で下ろした
そして、この厳しい状況を生き抜いた彼女には、私は尊敬しかなかった

彼女のこの時の生き様に、自分が小さ過ぎて返す言葉が見つからない

戦から生還した方を迎え入れる気持ちで
再会した2018年5月2日のオートクチュールレッスン

ここは自分に挑戦する場なので、彼女はいつも通りの落ち着いた雰囲気を纏い
レッスンに挑んだ

期間が2ヶ月空いていた故
身体の軸がなかなか入れず、意思と反してブレてしまう身体
ご本人の表情にも苦しさが滲み出ていた

しかし、私はあのような困難な状況でも
今、目の前で、ここに再度美しさへ挑むその姿に
それこそ真の美しさを感じた

そこには、諦めない 倒れてもまた這い上がる という姿があったから

ハイヒールへの道は一進一退
その時の身体のコンディションで、状態が違うこともあり
だから自分の身体には敏感になる必要がある

何よりも乗り越えた人の芯の強さとは、こんなにも美しいのか
美しさとは何か



コーチである身を忘れてしまうほど、彼女から問われ
強き生き様が美しさを創ると、私は導き出した

その後彼女は、逆境に負けず、ご自身の美学を貫かれ
コンスタントにレッスンを続けられた

そして季節はすっかり汗ばむ初夏となり
今年の日本を襲った猛暑の始まりでもあった

しかし、酷暑を吹き飛ばすかのようなサプライズが
彼女にハイヒールの女神が、またも微笑んだ

7月9日のレッスン後に、彼女からのメールに目を通したその最後

凜先生、先日 歩いてたら 見知らぬ男性から
「お綺麗な方だなと 見とれてましたと」言われました

すごく見てるので 、道を聞きたいのかしらと
(眼鏡橋付近で 観光客の多い場所がら)
おや 何でしょ?と 見返してみたら慌てて言われたのです
ナンパ目的でも無く 純粋な賞賛でした


昨年のクリスマスシーズンに起きた女神の微笑みに続き
これは私にとって、夏のビックボーナス級に嬉しい出来事で
何度も何度も読み返し、胸がはちきれそうになった

そう、ただハイヒールが凄いだけではなく
ハイヒールを美しく歩く努力と、逆境に負けなかった彼女だからこそ
手にした出来事
世の中を美しく魅了した Takakoさんを想像するたびに
目頭が熱くなった

夏真っ盛りの8月、Asami-Parisセミナーに初参加された彼女は
益々、ご自身の美学に確信を得て、それは師匠の言葉からも、とくと伝わった

純粋な美しさの輪が広がる

じわじわと我が魂が喜んでいることは、自分でも分かっていた
丁度、Asami-Parisコースで美学を受け始めたばかりで
新たな自分に目覚めようとしていた頃でもある

そしてTakakoさんとの出会いから、約1年が経った9月14日のレッスン

ピンクのルージュだったあの頃の彼女は
今では GIVENCHYの真っ赤な美しいルージュで
冒頭の言葉を私に向けた

私自身、正直に時折、周りの状況に負けそうなことが何度もある
けれど、思い直し、自分の美学を貫けたのは

美しい師匠や共に歩む美しい同士の方々の存在
そして大切なクライアントの存在があるから
見えない何処かで、自分の信じる道を貫く人々のエネルギーを感じれるから

何よりも自分の為であるから

これから先も私は自分らしくある為に、女性らしくセクシーで在りたい

そしてハイヒールの美しさを追求したい方の為に
歩みを止めることはない

最後に私の敬愛するTakakoさんのこれからの未来が
これからも美しく輝いていきますように





このような奇跡の出会いを紡いでくださった美しき師匠へ
そして沢山の学びを与えてくださった美しき貴女へ



沢山の愛、感謝を捧ぐ  Les Caprices ・凜


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